精神障害でも障害年金の対象外のもの
原則として
今回は、精神障害にもかかわらず、障害年金の認定対象とならないものをご案内いたします。
この話は、細かくしていきますと色々な社会保険審査会裁決例等を引用することになり、また難しい話になってしまいますので、いつもの通り大雑把な話をしていきます。
現在の国の扱いでは、
・ 神経症(F4)⇒ (F4とはICD-10コードと言われる国際疾病分類による区分けです。)は、原則障害年金の対象外。
・ 人格障害(F6)は、原則障害年金の対象外。
とされております。
これらは、厚生労働省の「障害認定基準」(精神の障害)にも記載がされております。(以下、引用します。)
第8/精神の障害
2 認定要領の
A 統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害並びに気分(感情)障害から・・・
(4) 人格障害は、原則として認定の対象とならないものとします。
(5) 神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならないものとします。
以上、引用でした。
原則は分かったけど、例外は?
とはいえ、原則があれば、例外もあります。当然ながら・・・。
そこで例外を見ていきます。
実は上記の認定基準の引用(5)には続きがありまして、
(5) 神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならないものとします。(←ここまでは先程の通りですが)
ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症または気分(感情)障害に準じて取り扱います。
なお、認定に当たっては、精神病の病態がICD-10による病態のどの区分に属する病態であるかを考慮し判断します。
と記載されております。
傷病名だけであきらめないで
上記のような取り扱いが原則ですが、
単純に
「病名が強迫性障害だから、障害年金は無理かなあ・・・」
というようにあきらめない方がいいです。
実際のところ、どう対応するか?
実際に弊事務所で申請した場合でも、神経症といわれる疾患の皆様も障害年金の受給をされていらっしゃいます。
障害認定基準では、神経症の場合
その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症または気分(感情)障害に準じて取り扱います
とされています。
じゃあ、それをどのように申立てするか? お医者さんに証明していただくか? ということですが、
主治医先生には、
・ 診断書記入の際に、
「気分(感情)障害」または「統合失調症、統合失調感情障害及び妄想障害」の病態を呈していると先生がご診断されましたら、お手数でも診断書「⑬備考」欄にその旨と、示している病態のICD-10コードをご記入ください。
というように書面でお願いする。
また、ご自分で出来る事としては、主治医先生に上記のように記入してもらったら、
・ 記入いただいた病態に関する症状、日常生活の困難さなどを「病歴就労状況等申立書」に具体的に記入する。
という事かと思います。
まとめ
精神障害において、なぜ人格障害や神経症が障害年金の受給対象外なのか?
これに対する明確な回答はないと思われます。
精神医学の世界でも、これらと精神疾患との境目も明確ではなく、障害年金の社会保険審査会裁決においても、まだまだ裁決は流動的であります。(認容されるもの、棄却されるもの、どちらもあります。)
制度上でも、まだまだ改善の余地はあるかと存じます。
ここではそういった議論は避けますが、精神病の様態を呈している場合は、きちんと主治医先生にご記入いただくよう、働きかけを行って頂きたく思います。
以上、精神障害でも障害年金の対象外なもの、でした。
お付き合いくださいまして、ありがとうございました。 (社会保険労務士 海老澤亮)