病歴就労状況等申立書作成のためのプロのコツ その2
今回も前回に引き続いて「病歴就労状況等申立書」の書き方を考えてまいりましょう。
前回の復習
前回は、
・ 診断書に客観的なデータを記入しづらい「精神障害」などは、特に念入りに申立書を作りこむ。(てんかん等は発作の強度、頻度など記入する欄がありますのでちょっと違いますが・・・。)
・ しかし、人工透析や人工関節など、ある程度障害等級が決められている場合は、そこまで作りこむ必要はないと思う。
・ 申立書を作りこむ際には、読んだ方(審査側の方)が状態が目に浮かぶように作りこめれば、なお良い。(勿論、簡単ではありませんが・・・。)
というようなことを書きました。
遡って年金を請求する場合と、そうでない場合の違い
病歴就労状況等申立書作成の力の入れ具合ですが、
・ 遡って年金を請求する場合
と
・ そうではない場合
で、力の入れ方が、また違ってきます。(これは弊事務所の場合ですが・・・。)
何が違うか? ですが、
遡って障害年金を申請される場合は、障害認定日の頃から「ずーっと」障害等級に該当する状態だった、というように認定される必要があります。長い方ですと、10年単位で「ずーっと」障害状態だった、と認めてもらう必要があります。
そのため、遡る場合は、申立書も障害認定日の頃から念入りに作りこんでいく必要があります。
それに対して、事後重症請求などの場合(勿論、障害認定日請求も含みますが。)は、
現状では障害等級に該当しているか?
ということが大事です。誤解を怖れずに言えば、過去の状態は、そこまで重要ではありません。
そのため、病歴就労状況等申立書は、今の状態に重点を置き、作りこんだ方がいいでしょう。(勿論、過去に関しても念入りに作れればいいですが、なかなか大変ですので。)
それが、今回1つ目のアドバイスです。
「精神障害」の場合は「日常生活能力の判定」項目ごとに書く
私が、精神の障害で年金を請求する場合の手順としては、かなり大雑把に言いますと
(受診状況等証明書については割愛します。)
① まずは病歴、医療機関の受診歴をおおよそでまとめる。
(傷病名が途中で変わっているか(例えば、不眠症→うつ病など)も確認する。)
② 診断書裏面の「日常生活能力の判定」に記載のある7項目(適切な食事、身辺の清潔保持、金銭管理と買い物、通院と服薬、他人との意思伝達及び対人関係、身辺の安全保持及び危機対応、社会性)ごとに、印象的なエピソードをまとめる。
診断書の裏面には、各項目の具体例が書かれていますので、具体例をもとに質問しながらまとめていきます。
③ まとめた書類をもとに、診断書を記入いただく際の参考資料を作る。それを医師にお渡しして、診断書作成を依頼する。
④ 診断書が出来たら、内容を確認して、場合によっては訂正、加筆をお願いする。
⑤ 診断書、その参考資料をもとに、病歴就労状況等申立書を作成する。
(③,④と同時進行で進めていますが、診断書が出来上がってきたら、その内容と矛盾がないかを確認して、手直しをする。)
⑥ 必要書類をそろえて、年金申請する。
といった流れになります。(話が少しそれてしまった。すみません。)
そのため、病歴就労状況等申立書は、医師にお渡しした参考資料がベースになっています。上記の7項目を具体的なエピソードを交えて、申立書に盛り込む。それだけでも、現在の状態がかなり網羅できると思います。この点をおろそかにしますと、きちんとした病歴就労状況等申立書は書けない、と思います。(これが2つ目のアドバイスです。)
具体的なエピソードがあれば、申立書に盛り込む
目に浮かぶような申立書には、結局のところ「具体性」が必要なんだと思います。(それが3つ目のポイント。)読む人に想像力を働かせてもらえるように、抽象的な言葉の羅列ではなく、実際にあった出来事などを、なるべく具体的に記入する。
勿論、病歴就労状況等申立書はただ長々書けばいい、というものではありません。なるべく簡潔で、無駄のない文章がいいと思います。
でも、無駄と具体性は違います。読む方が理解しやすいような例を加えるのは無駄ではなく、親切になると思います。
具体例のサンプルとしては、
・ 警察にご厄介になったようなエピソード
・ えっ、とびっくりするようなエピソード
などもあるでしょう。
分かりやすい文章を書く
それと、申立書に限らず、何でもそうですが、
意味の伝わりやすい文章
を書く必要があります。
工夫の仕方としては、なるべく1文を短くする。
1文が長いと、どこが主語なのか、といったこともわかりにくく、「結局何が言いたいの?」と思われてしまうこともあります。また、
句読点をきちんと使う。
ことも重要です。句読点がないと読む人が誤解してしまう。
例えば、
母が病気で苦しんでいる彼女を心配して薬をあげた。
というような短い文章でも、薬をあげたのが「母」なのか? 「私」なのか?
分からない。
そのような点に注意して、申立書を書いても、何度も推敲する。また、文章の順番を入れ替えた方が説得力が上がったりもしますし、似た内容をまとめた方がよかったりもします。
最後は日本語力の話になりましたが、その点は非常に大事だと思います。分かりやすい文章を書くことが4つ目のポイントです。
今回のまとめ
今回のポイントとしては、
① 遡っての申請かどうかを考え、どこに力点を入れるか決める。
② 診断書裏面の「日常生活能力の判定」7項目を申立書に入れ込む。
③ 具体的なエピソードを盛り込むことが結局は「目に浮かぶような」書類につながる。
④ 日本語として意味がよくわかる、分かりやすい文章を書く。
となります。
今回は以上となります。お付き合いくださいまして、ありがとうございました。
(社会保険労務士 海老澤亮)