カルテがなく、医師の記憶に基づく診断書の信用性について

こんにちは。
茨城県桜川市の社労士 海老澤亮です。
本日もよろしくお願いします。
今日はマニアックな話ですが、通常カルテをもとに書かれる障害年金の診断書が、カルテに基づかずに、医師の記憶をもとに書かれた場合、どれほどの信用性があるものか? 書いてみます。
平成23年の社会保険審査会での裁決例を見ますと、
「現症日として記載されている障害の状態は、当時の診療時に作成された記載に基づくものではなく、主治医の記憶に基づくものとされているものであることから、上記診断書を障害程度認定適格資料として採用することはできない」
とされておりました。
なんだかわかりにくい表現ですが、「カルテに基づかずに記憶をもとにして書かれても、それは証拠になりません」というような認定です。

このような扱いになった要因の一つが、「当時の医療機関が廃院となっており、カルテが残っていなかった」ということです。苦肉の策として、医師は備考欄にそのような旨を記載の上、診断書を作成したようです。
医師が障害年金の診断書を作成する場合、あえて患者さんに不利になるような診断書を作成することは少ないと思います。どちらかと言えば、患者さんに不利になることは避けたい、と思うでしょう。そうすると、記憶をもとに作成する、などの客観的な資料がない場合、極端な話「なんでも書けてしまう」。
カルテは医師法上作成を義務付けられていて、誤った記載はされにくく、信用性はある程度ある、とみなされます。そこでカルテをもとに診断書を書くことで、「ある程度信用性があり、再現性がある(誰が書いても同程度の診断書になる)」とみなされるわけです。
そのため、「廃院してカルテがない」などの場合は、医師の記憶ではなく、他の客観的な資料を探さなければならない、という困難な状況になってしまいます。
(社会保険労務士 海老澤亮)
