障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領 について ①
こんにちは。
茨城県桜川市の社労士 海老澤亮です。
本日もよろしくお願いします。
今回は、少しマニアックな内容です。
厚生労働省が作成している「国民年金・厚生年金の障害年金の診断書を作成する医師の皆様へ 障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領 ~記載にあたって留意していただきたいポイント~」という長いタイトルの文書について、ご紹介いたします。
PDFで確認できます。ボリュームがありますが・・・。
0000130048.pdf (mhlw.go.jp)
こちらは、厚生労働省が「医師に、より正確に患者の状態を表した診断書を書いてもらうため」に作成した文書かと思います。多忙な医師が、このボリュームのある文書をどれだけ読んでいるか? 疑問ではありますが、精神疾患等で障害年金を申請する方にも、参考になるかと思い、何回かに分けて、簡単に紹介していこうと思います。
重要項目 「日常生活能力の程度」について
まずは、最も重要な項目ともいえます、診断書裏面の「日常生活能力の程度」を診断する際のポイントを、そっくり引用いたします。
※ 本項目について、「①障害の原因となった傷病名」欄に知的障害が含まれる場合(又は発達障害などで知的障害を伴っていて、《知的障害》欄の方が本人の状態を適切に評価できる場合) は本項目の《知的障害》欄で判定し、①欄に知的障害が含まれない場合は《精神障害》欄で判定してください。
《精神障害》
(1) 精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。
○ 適切な食事摂取、身辺の清潔保持、金銭管理や買い物、通院や服薬、適切な対人交流、身辺の安全保持 や危機対応、社会的手続きや公共施設の利用などが自発的にできる。あるいは適切にできる。
○ 精神障害を持たない人と同じように日常生活及び社会生活を送ることができる。
(2) 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である。
○(1)のことが概ね自発的にできるが、時に支援を必要とする場合がある。
○ 例えば、一人で外出できるが、過大なストレスがかかる状況が生じた場合に対処が困難となる。
○ 日常的な家事をこなすことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難が生じることがある。身辺 の清潔保持は困難が少ない。ひきこもりは顕著ではない。自発的な行動や、社会生活の中で発言が適切に出来ないことがある。行動のテンポはほぼ他の人に合わせることができる。普通のストレスでは症状の再燃や悪化が起きにくい。金銭管理は概ねできる。社会生活の中で不適切な行動をとってしまうことは少ない。
(3) 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
○(1)のことを行うためには、支援を必要とする場合が多い。
○ 例えば、医療機関等に行くなどの習慣化された外出は付き添われなくても自らできるものの、ストレス がかかる状況が生じた場合に対処することが困難である。食事をバランスよく用意するなどの家事をこなすために、助言などの支援を必要とする。身辺の清潔保持が自発的かつ適切にはできない。対人交流が乏しいか、ひきこもっている。自発的な行動に困難がある。日常生活の中での発言が適切にできないことがある。行動のテンポが他の人と隔たってしまうことがある。ストレスが大きいと症状の再燃や悪化を来たしやすい。金銭管理ができない場合がある。社会生活の中でその場に適さない行動をとってしまうことがある。
(4) 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
○(1)のことは経常的な援助がなければできない。
○ 例えば、親しい人間がいないか、あるいはいても家族以外は医療・福祉関係者にとどまる。自発性が著 しく乏しい。自発的な発言が少なく発言内容が不適切であったり不明瞭であったりする。日常生活において行動のテンポが他の人のペースと大きく隔たってしまう。些細な出来事で病状の再燃や悪化を来たしやすい。金銭管理は困難である。日常生活の中でその場に適さない行動をとってしまいがちである。
(5) 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。
○(1)のことは援助があってもほとんどできない。
○ 入院・入所施設内においては、病棟内・施設内で常時個別の援助を必要とする。在宅の場合においては、 医療機関等への外出も自発的にできず、付き添いが必要であったり、往診等の対応が必要となる。家庭生活においても、適切な食事を用意したり、後片付けなどの家事や身辺の清潔保持も自発的には行えず、常時の援助を必要とする。
上記の内容は、診断書裏面の「日常生活能力の程度」欄にも、よりコンパクトにまとめて(半分くらいにまとめて)例示されています。しかし、見てみますと、どれも重要なポイントですね。
続いて、知的障害について引用いたします。
《知的障害》
(1) 知的障害を認めるが、社会生活は普通にできる。
○ 適切な食事摂取、身辺の清潔保持、金銭管理や買い物、通院や服薬、適切な対人交流、身辺の安全保持 や危機対応、社会的手続きや公共施設の利用などがある程度自発的にできる。あるいは適切にできる。
○ 知的障害を持たない人と同じように日常生活及び社会生活を送ることができる。
(2) 知的障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である。
○(1)のことが1人で自発的にできるが、時に支援を必要とする場合がある。
○ 日常会話はできるが、抽象的な思考が不得手で、込み入った話は困難である。また簡単な漢字の読み書 きはできる。
○ 日常的な家事をこなすことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難が生じることがある。身辺 の清潔保持は困難が少ない。対人交流は乏しくない。ひきこもりがちではない。行動のテンポはほぼ他の人に合わせることができる。金銭管理は概ねできる。社会生活の中で不適切な行動をとってしまうことは少ない。
(3) 知的障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
○(1)のことが概ねできるが、支援を必要とする場合が多い。
○ 具体的な事柄についての理解や簡単な日常会話はできるが、声かけなどの配慮が必要である。ごく簡単 な読み書きや計算はできるが、生活場面で実際に使うことは困難である。
○ 医療機関等に行くなどの習慣化された外出は付き添われなくても自らできるものの、ストレスがかかる 状況が生じた場合に対処することが困難である。食事をバランスよく用意するなどの家事をこなすために、助言などの支援を必要とする。身辺の清潔保持が自発的かつ適切にはできない。適切な指導のもとで、社会的な対人交流や集団行動がある程度できる。自発的な行動に困難がある。日常生活の中での発言が適切にできないことがある。行動のテンポが他の人と隔たってしまうことがある。金銭管理ができない場合がある。社会生活の中でその場に適さない行動をとってしまうことがある。適切な指導があれば単純作業はできる。
(4) 知的障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
○(1)のことは経常的な援助がなければできない。
○ 読み書きや計算は不得手だが、簡単な日常会話はできる。生活習慣になっていることであれば、言葉で の指示を理解し、ごく身近なことについては、身振りや短い言葉で自ら表現することができる。日常生活では、経常的な支援を必要とする。
○ 例えば、親しい人との交流も乏しく引きこもりがちである、自発性が著しく乏しい。自発的な発言が少 なく発言内容が不適切であったり不明瞭であったりする。日常生活において行動のテンポが他の人のペースと大きく隔たってしまう。金銭管理は困難である。日常生活の中でその場に適さない行動をとってしまいがちである。保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な作業はできる。
(5) 知的障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。
○(1)のことは援助があってもほとんどできない。
○ 言葉の理解も困難またはごく身近なことに限定されており、意思表示はごく簡単なものに限られる。
○ 入院・入所施設内においては、病棟内・施設内で常時個別の援助を必要とする。在宅の場合においては、 医療機関等への外出も自発的にできず、付き添いが必要である。家庭生活においても、適切な食事を用意したり、後片付けなどの家事や身辺の清潔保持も自発的には行えず、常時の援助を必要とする。
こちらも診断書にコンパクトにまとめて例示されていますが、精神障害よりも詳細に書かれているかと思います。
主治医先生には、上記の例示項目が、診断書を書く上で、大事な判断要素なんだな、と前もって分かっていれば、主治医先生に日常生活の様子を伝える際も、より適切なポイントを伝えられるのではないでしょうか? (そうはいっても、なかなか難しい話ですが・・・。)
今回はマニアックで難しい内容でした。何かの参考になれば幸いです。
次回は、「日常能力の判定」(適切な食事、身辺の清潔保持など。)についてみていきたいと思います。
お付き合いくださいまして、ありがとうございました。
(社会保険労務士 海老澤亮)